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日本のエネルギー及び大規模地震後の復旧と地震対策

東京電力柏崎刈羽原子力発電所

2008年7月17日 新政クラブ会派視察

7月16日・南長岡ガス田 越路原プラント→17日・東京電力柏崎刈羽原子力発電所

2007年7月16日午前10時13分、つまり新潟県中越沖地震から丁度1年が経過したこの施設は一体どのような状況にあるのか、そしてその安全性はどのようであったのか。昨年はテレビの前で釘づけになっていたことを思い出しながら、震源に最も近い施設である東京電力柏崎刈羽原子力発電所を見学させていただくこととした。

昨日の国際石油開発帝石ホールディングス南長岡ガス田 越路原プラントに続き、今回の視察は「日本のエネルギー事情」はいかなる状態に置かれているのかという事も大きなテーマである。いったい現在の日本においてどのような形でエネルギーが供給されているのか考えたことがあるだろうか、直接燃料としてあるいは、姿を変えて電力として産業用途や一般生活用とに供給取れている。この姿が如実に理解できるのが「オイルショック」である。

過去第1次、第2次オイルショック時には、トイレットペーパーが無くなってしまい買いだめ現象なる事態が起きたことは記憶にあるだろう。しかし今回の石油高騰は率からいえばあのとき以上の上昇率にもかかわらず、買い占めなどのパニックが起きていないのが不思議なくらいである。周りを見渡してもガソリン高騰に悲鳴を上げているマイカー所有者や、全国一斉に休漁した全漁連加盟の漁師さんなどがニュースで取り上げられているが、スーパーへ押しかけてトイレットペーパーを奪い合っている主婦のようなパワーは感じられない。

このことに対して「電力業界において1973年当時は石油依存度が70パーセントを超えていたのが、現在では10パーセントを切っている。そして原子力による発電は30パーセントを上回って電力供給を行っている」つまり『電源構成のシフト化が成功している』と言えるのではないかという話を聞くこともできた。そうだろう、仮に以前と同じ石油依存体質で発電を続けていたら、電力代金はおそらくこの1年間で倍以上の値上げをせざるを得なかったに違いない。

柏崎刈羽原子力発電所視察
発電機

発電所について

ここでは写真撮影が厳しく制限されている。「テロ対策」という事であるが、これだけの規模であるから当然であろう。特に建物外観およびその構成については、安全上の観点から当然目視のみ、内部については各種ゲートはやはり保安上の観点から撮影禁止という事で視察を開始することとなった。

最初はゲストルームで全容の説明、この施設の大きさは420万平方メートル(東京ドーム90個分)あり、出入口は1か所となっている。現在は施設の整備のため、震災復旧工事のために6,000人/1日が出入りしているそうだ。7基の発電機があるが、その総合計は820万KW、山梨県全体の使用電力量は110万KWだから原発1基あればそれで済んでしまう。残念ながら現在は7基とも停止しているので我が国の排出する総CO2量が2パーセント増えてしまっていると言う。

ベース電力(原発の特徴として24時間365日運転が一番効率がよく、この電力を基準にして日中などのピーク時に火力発電で対応するのでベースとなる)を供給している施設がいかに大切であるか、分数でいう分母に値するこの施設がその有効性を説明できる良いチャンスだと思ったのだが。

また原子力つまりウランは非常にエネルギー密度が高い物質だ、たとえばここにある原発1基で発電する能力は太陽光パネルで言うとおよそ5兆円かけ山手線の内側全面に敷き詰める必要があるそうだ、また風力発電では同量発電させるには1兆円コストをかけ、山手線の内側の3.4倍の中にびっしりと風車を建てる必要があるそうだ(風が常時吹いていることは当然だが)。化石燃料と比較しても1グラムからとれるエネルギーは石炭26、石油42、ウラン8,200万(単位ジュール)と、1万桁以上違っている。CO2排出量に至っては発電中に発生する量はゼロである。

ただし良い事ばかりではない、ウランは細胞に対して突然変異などを引き起こす放射線を常に発生させている。特に世界でただ1つの被爆国であるわが日本では、国民がこの「被爆」という言葉に非常にナーバスになっているのは事実である。これらの条件をすべてクリアにし、近隣住民の合意やそこだけに留まらない国民的なコンセンサスが得られるような仕組みづくりが今後の大きな問題点になるだろう。

今回もゲストルームで説明を聞いている間に当発電所の工場長さんがわざわざ来ていただいて「ありのままを見て頂きたい」と言う重い言葉で挨拶して頂いた、また我が甲府市など地方自治体でも「危機管理で共有できる部分がある」と言う実体験から出た言葉もあった。これらの言葉を踏まえ今後の甲府市における防災活動など、貴重な体験から得た数々の経験則を積極的に利用させて頂く事が大切であり、今回の視察の意義が一層増すこととなるに違いない。

柏崎刈羽原子力発電所視察
作業服がよく似合う依田会長

原発内部へ

ゲストルームからいよいよ発電所内部へと移動である。その前にゲストルームで作業服に着替え、後のセイフティーゲート通過などを容易にするため携帯電話、小銭入れなど不要な物を置いてゆく。何せ大きな敷地内であるからバスに乗っての移動である、途中今回の地震の教訓から導入された化学消防車とすれ違うなど、臨場感が次第にあふれる中を進んでいった。

外観では気がつかなかったが、工場内の道路についてもその側溝部分や盛土部分については亀裂が走っていた。建屋の周囲は盛り土によって作られていたそうで、大きなところでは1.5メートルほど陥没したそうだ。事務所棟は2階の部分が損傷が激しく、一時仮設事務所へ移動して作業していた、特に周囲の配管であるとかダクト部分など、構造上耐震機能が要求されない部分の損傷が激しいと感じられた。

高さが155メートルある排気塔では塔自身はびくともしていないが、やはりそこへ接続するダクトが脱落したとの事である。これらすべてを耐震化するというのは大変な事だと思うのだが、実際必要なしかも重要な部分についてはこれと言って被害はなく、十分そのまま使えるのには驚きであった。

早速渡されたIDカードでゲートをくぐり、脱衣所へと進んだ。ここでは靴と靴下を脱ぎ指定された靴下に履き替えた後手袋を装着、放射能測定のための検査器具を首から下げ、工場内専用の靴をはき中へと進む。通路は配管だらけだろうと想像したが、これが実に整頓されていて塵一つ落ちていない清潔な内部であった。内部は全て負圧状態が保たれ、2重扉になっている。「閉よし」と指差呼称の後、向かう先の扉を開けて通過するのであるが、毎回これを呼称するのにちょっと照れてしまう社員もいるようだ。しかし「すべてに安全が優先する」のが現場なのだ。

この建物の内部に打設してあるコンクリートはちょっと違うようだ、何よりその精度が違うのだろうとても奇麗に感じた。説明では「クラックを発見した見学者から大丈夫かと言う質問がある」と言ってほほ笑んでいた、その方はコンクリートの性質がわかっていないのだろう、しかし丁寧に回答しているとの事で大変な事だと改めて感心した。

柏崎刈羽原子力発電所視察
炉底の非常用制御棒
柏崎刈羽原子力発電所視察
炉心から出ている高圧蒸気パイプと弁

いよいよ炉心である。円形の直径が4メートルほどあるだろうか、鋼鉄製の扉をくぐりぬけ炉心部へと進んだ。先ほどから説明を受けている非常停止のための制御棒が入るパイプが半円形のお椀の底のような部分に突き刺さっているのが見えた、これがいわゆる原子炉圧力容器なのだろう。周囲6メートルほどある炉心の周りを一回りし、ちょっと離れたところからいきなり目につくのが高圧蒸気排出用のダクトとそれを一気に止めるスプリング弁があった。

柏崎刈羽原子力発電所視察
この様な物ですべて中ヅリになっている
柏崎刈羽原子力発電所視察
この様な物ですべて中ヅリになっている

そしてこれらすべての炉心部分はいわゆる「中ヅリ」状態で固定されていない、やはり常に動いている炉心は固定することに無理があり、同時に地震対策も考えるとこのような中ヅリが安全なのだろう。非常に精密な機械というイメージは、今まで数々の炉を見てきた私もびっくりすることだらけであった。

その後最深部にある緊急用水注ポンプ室をみると、地震計が2セット置いてあった。東西、南北、上下それぞれの揺れを検知する地震計だそうだが、地震当日は最大東西で680ガル、上下で488ガルという地震加速度を計測したそうである。原子炉自動停止設定値は水平120ガル、垂直100ガルとなっていたので当然自動停止である。

柏崎刈羽原子力発電所視察
原子炉上部と燃料棒プール

続いて原子炉最上部の様子を窓越しに見せて頂き、あのプールは高さ3メートルほどの波が立ったんですという説明にびっくり。IAEAの監視カメラは24時間この場所を監視しているのだそうだが、逆に世界中でこんな事例は無いからちょうど良い研究材料になっていますねと言う質問に対しては、笑っていた。

その後発電設備を窓越しに見学し、管制室を見せて頂き工場を後にすることとした。 この間およそ2時間ちょっと、8,000歩ほどになると言う工程であった。

地震当日の原子炉

地震発生直後これだけの揺れがあったという事は自動停止で当然だが、どのような状況であったか説明いただいたのでまとめてみる。

1−止める
 本来この原子炉の設計値は緊急停止時点2秒で制御棒が挿入となっていたが、実際は1.2秒で185本すべての制御棒が挿入完了したそうである。

2−冷やす
 当然核反応が続いてしまった場合は燃料を冷却するため地下5階にある緊急冷却ポンプから水が送り込まれることとなるのだが、この施設ではその事態になる以前に自動停止したとの事である。

3−閉じ込める
 原子炉格納容器ハッチは閉じ込める必要もなく、無事運転停止となっていたとの事である。

アメリカ、スリーマイル島で起きた「メルトダウン」は、この内2番目の冷やすという工程の中でセンサーの故障で水がいっぱいに入っているという誤作動したままになっていたそうだ。だから作業員はそのポンプのスイッチを切り、冷却水を送るのを止めてしまったためメルトダウンという最悪の事態にまでなってしまったと言う。これを教訓に現在の原子炉ではすべての計測器がダブルカウントになっていて、1つが故障してももう一つが作動している状態を作り出していると言う。まさに事故からの教訓なのだと語ってくれた。
チェルノブイリ発電所の爆発事故では、閉じ込めると言う工程がなかったため、圧力容器が爆発し周辺に飛び散らせてしまったと言う論外な事故であったそうだ。

この原子炉建屋は地下45メートルまで掘削し、安定支持基盤の上にコンクリート打設の後に立ちあがっていると言う。直下に断層などの亀裂が入ってもおそらく一定の平衡は維持できるのではないかと思われる設計が施されている。
いわゆる「これでもか、これでもか」と言って自然に立ち向かって作り上げられた堅牢な砦ではないかと思えた。

当日6号機から海中へ放出された放射線、また、7号機排気筒から大気中へ 放出された放射線についての現地説明は以下の通りであった。

○6号機から海中への放射線量は0.000000002ミリシーベルトです。
この数値は「胸のレントゲン」時に受ける放射線量と比較すると2千5百万分の1、1年間に自然界から受ける放射線量と比較すると12億分の1になり、人体への影響はありません。
○7号機から大気中への放射線量は0.0000002ミリシーベルトです。
この数値は「胸のレントゲン」時に受ける放射線量と比較すると25万分の1、1年間に自然界から受ける放射線量と比較すると1千万の1になり、人体への影響はありません。
○単位について
「Bq(ベクレル)」は放射線を出す能力を表す単位のことであり、一般的には人体への影響が心配されるため、今回の事象のような場合は、その影響度合いを表す「Sv(シーベルト)」を使用しています。
○漏れた放射線量については、
一般の方に分かりやすくするため「胸のレントゲン」時に受ける放射線量0.05ミリシーベルト(1回)、および、一般人が1年間に自然界から受ける放射線量2.4ミリシーベルトと比較いたしました。

と言う説明であった。これではずいぶん騒いだ当日のニュースと違うなあと言う気がしている。少なくとも報道とは「真実を的確に伝える」のが使命ではないか、なんだか最初から「原発は危険」と言っているようなワイドショー的な発言が多かった気がしている。火災についても、実際の原発施設とは全く関係ない変圧器からのオイル漏れに伴う火災であって、「原発が燃えている」という報道は正しい伝達ではなかったと感じた次第である。

感想

一通り視察が終了しゲストルームに戻って余韻が冷めぬうちに質問したことは、「我が国の貴重な技術がどんどんこのようにオープンにすることよって流失してしまう事が心配ですが」と言ってみた。

実際こんな天災による破壊的な実例は作りたくとも出来る物ではない、その中で管制室にいた人は一体何を考えたのか、そしてそれぞれの持ち場で作業していた人々は、激しい揺れの中それぞれが何を思って数分間にわたり耐えたのだろうか等、深い部分で知りたいことが次々に出てきた。

これからの日本のエネルギー事情を考える上で、昨日の帝国石油越路鉱場やここと同様の原子力利用施設で作業している人々は、きっと「おれたちが日本を支えている」と感じていることだろう。

地球温暖化という言葉が金科玉条あたかも葵の御紋の様に飛び交っている今日、本気でそのことに取り組み、しかも平然としてこれらを成し遂げている人々に対して、我々市民はあまりにも無知すぎないか。片方で食の安全を言い、片方でエネルギーの無駄遣いをしている人々のなんと多い事か、私は今回の視察が今までに無く充実したものであったと自信を持って行きあう人々に伝える事が出来る。同時に自身の環境問題への取り組みについても、従来とは視点を変えた取り組みが出来るなと感じたところであった。

東京電力の皆様、ありがとうございました。


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