この施設には平成12年8月9日、11月29日の2回にわたり見学と説明を聞く事ができた。その触れ込みがなんと言っても「煙突のない焼却炉」ということから、全国の自治体からの見学者が多数訪れている中をじっくりと説明を受ける事ができた。
(左)全景です、ご覧のように煙突がない。(右)工場内部です
新しい考えのもと技術導入をし、これからのごみ処理はこうあるべきだといった気概さえ感じられました。技術の進歩は著しいものがあります。
本方式は、ごみを圧縮し、熱分解炉で処理したものを高温反応炉に装入し、純酸素を吹き込んで溶融します。そして溶融物からはスラグやメタルを再生し発生するガスを改質、急冷、精製して、清浄な合成ガスとして回収します。
世界のゴミ焼却施設の7割は日本にあると言われています(国の事情もあるでしょう、これだけ一部に人口集中している国はあまり在りません)。かつて日本では衛生上の観点からゴミの焼却処理が求められてきました。その結果ゴミは燃やして灰は埋めるというのが当たり前の方法でした。この相反するような2つの命題を解決してゆくのが次世代型焼却溶融炉ではないかなと考えています。
| 処理方法 | 排ガス発生量 (Nm3/ゴミトン) | ダイオキシン 濃度 (ng-TEQ/Nm3) | ダイオキシン 負荷量 (μg/ゴミトン) |
| 従来型焼却炉 | 6,000 | 0.1 | 0.6 |
| 川鉄サーモセレクト方式 | 4,000 | 0.001 | 0.00069 |
ゴミは完全に再資源化されて生き返る
1―プレス・脱ガスチャンネル
廃棄物をプレスで最初の容積の約1/5に圧縮する。これにより廃棄物中の水分の分布は均一化され、空気は排除され脱ガス効率が向上する。
次に圧縮された廃棄物は間接式加熱炉である脱ガスチャンネルで脱ガス(水分の蒸発、熱分解による揮発分の発生)され、続いて高温反応炉からの放射熱などによりさらに熱分解される。廃棄物中に含まれる炭化水素、セルロースの熱分解反応により熱分解カーボンが得られる。
2―高温反応炉・均質化炉
脱ガスチャンネルで発生したガスは高温反応炉に流入し、熱分解物は新たな圧縮廃棄物の挿入により押し出されて高温反応炉下部に堆積する。高温反応炉下部に酸素を吹き込み、熱分解物中の炭素と酸素の反応により下部の温度は中心部で最高約2,000℃になり、廃棄物中の金属や無機質の成分は溶融する。
一連の化学式による表現は以下のとおりです
溶融物は高温反応炉から約1,600℃に保持された均質化炉へ流れ、微量の炭素などはガス化される。均質化炉において金属溶融物(メタル)は比重が大きいため、無機質溶融物(スラグ)の下部に溜まる。連続的に溢流堰を通り水砕システムへ流れ落ちて冷却固化される。回収混合物は磁選によりスラグ、メタルに分離される。
高温反応炉下部で発生したガスと、脱ガスチャンネルで発生した熱分解ガスは合流し、高温反応炉上部の改質部において約1,200℃で2秒以上滞留する。
この条件により、ガス中のタールやダイオキシン類およびその前駆体は完全に分解され、H2、CO、CO2、H2Oを主成分とする粗合成ガスに改質される。約1,200℃の温度では次の式のような状態になりメタンガスの量は極微量となる。
3―ガス精製
高温反応炉で改質された粗合成ガスを、急冷装置で約1,200℃から約70℃まで急冷し、de novo 合成によるダイオキシン類の再合成を阻止した後に、酸洗浄する事により重金属を除去し、アルカリ洗浄では酸性ガスを除去する。
沸点の低いZn(亜鉛)、Pb(鉛)などの重金属成分は主として高温反応炉からガス状の状態で移送される。また、廃棄物に含まれる塩素は、主としてHClとして合成ガス中に存在し、HClは冷却・洗浄液に溶け込む。HClを含む酸性水(ph2〜3)によって、粗合成ガスは洗浄され、重金属成分は取り除かれる。このシステムは廃棄物中の塩素分を有効に利用している。
洗浄液は沈殿槽に送られ炭素微粒子は取り除かれる。熱交換器で間接冷却された後、ふただびガスの急冷に循環利用される。ごみに由来する水は沈殿槽で余剰水となり、水処理プロセスへ送られて処理される。酸洗浄システムでの反応例は以下の通り。
この酸洗浄によるこのプロセスでは火灰が発生しない。
酸洗浄された合成ガスは、アルカリによりさらに洗浄され、塩化水素などの酸性ガスが中和除去される。
生成されたNaCl(塩)は最終的には、塩製造装置で混合塩として回収される。
さらにガスは、除塵、脱硫洗浄、乾燥され、有害物質が除去されたクリーンな燃料ガス(精製合成ガス)が得られる。
4―水処理・塩製造装置
ここでは、従来の焼却方式においては飛灰としてバグフィルターで捕そく除去されていたものを、粗合成ガスを直接湿式洗浄して取り除き、水処理を行う事で有用な金属水酸化物、混合塩に分離回収することができる。
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処理水 再利用水
↓―――――――――――――↓――――――――――――↓――→
スラグ類似分 金属水酸化物 混合塩
カルシウム分 Zn(OH)2 NaCl
アルミニウム分 Pb(OH)2
シリカ分
↓ ↓ ↓
炉へ(再スラグ化) 非鉄原料 工業塩
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従来型の焼却+灰溶融の設備でも、燃焼部分の改良、3つのTの改良(燃焼温度 : Temperature、被燃焼物質の滞留時間 : Time、空気と被燃焼物質の混合状態 : Turbulence)などにより、焼却炉の出口でのダイオキシン類濃度の低減が図られてきている。
しかしながら、従来のシステムでは蒸気ボイラで熱を回収し、急冷出来ないなどのために、ダイオキシン類が再合成するという問題は不可避である。再合成されたダイオキシン類はさらなる発生を抑えるために、低温のバグフィルターで除去し、排ガスを再加熱して触媒で分解し、ダイオキシン類を低減した後に大気に放散している。バグフィルターで捕捉された飛灰は蒸気ボイラで再合成されたダイオキシン類を大量に含んでいる。この飛灰は溶融処理などによって分解する必要があるが、灰溶融設備でも溶融飛灰が発生し、この中にダイオキシン類が大量に含まれている。
一般にダイオキシンの再合成は次の項目などによって影響されると言われている。
サーモセレクト方式では(1)〜(4)の条件を回避している
以上の事により、ダイオキシンの再合成が阻止されている。
| 回収物 | 含有量 | 回収量(注2) | DXNs分配量 -TEQ/tごみ |
| 精製合成ガス | 0.00039ng-TEQ/?n | 722 N/t-ごみ | 0.00028 |
| スラグ | 0.0007ng-TEQ/s | 62.5kg/t-ごみ | 0.00004 |
| 硫黄 | 0.35ng-TEQ/kg | 0.52kg/t-ごみ | 0.00018 |
| 金属水酸化物 | 0.29ng-TEQ/kg | 0.63kg/t-ごみ | 0.00018 |
| 処理水(注1) | 0.00001ng-TEQ/L | 680L/t-ごみ | 0.00001 |
| ダイオキシン類排出合計 | 0.00069 | ||
(注1)イオン交換後、塩製造原水に相当、(注2)固形物は乾燥表示
千葉工場での実証運転では約15,000トンの千葉市の一般廃棄物を処理し、その実用性の高さを実証している。またここは製鉄工場の中にあるという利点を生かし、数々の実証試験を行いながらも、そのインフラを生かして精製ガスを利用する事ができた。同時に燃料電池による発電にも使用し、これからの方向性を実証する事が出来た。
排出物のうちスラグについては「一般廃棄物の溶融固化物の再生利用に関する指針」に準拠しており、一次製品として路床・路盤材料に利用、二次製品としては側溝骨材、断熱材、壁材などに活用。メタルは銅の平均割合が17.5%であるため銅精錬の原料として、硫黄は硫酸原料として、金属水酸化物は亜鉛を含有しているため亜鉛精錬の原料として利用した。
ダイオキシン量については[表2]のとおり総排出量が0.00069 であり、現在、投入廃棄物に含まれるダイオキシン類は10 -TEQ/t-ごみと言われている事から、このプロセスはダイオキシン類を分解する性能を持つ事が実証された。
サーモセレクトシステムのエネルギー収支表
(「ごみをいただきます」−平成13(2001)年7月発行−より抜粋)
視察研修・2000年8月9日、11月29日の2回
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