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ごみをいただきます

最終処分のはなし

山梨大学工学部土木環境工学科 金子栄廣

この記事は、2000(平成12)年1月28日に開催された「答えのないシンポジウム」−会場・甲府市総合市民会館 主催・無尽会−での山梨大学工学部助教授 金子栄廣(ひでひろ)さんの講演記録です。

1. ごみの流れと最終処分

 われわれの生活から出るごみは,(図1)のように流れていきます。ごみが発生してから排出までは排出者の責任で管理されますが,収集以降の作業は清掃事業者(自治体など)の手によって行われています。

 ごみとして排出されたもののうち利用価値がある部分については極力資源化(リサ イクル)する努力が払われていますが,現在のシステムではどうしても資源化できない部分については適正な処理を行ってから処分せざるを得ないのが実状です。

ごみの流れと最終処分
(図1)ごみの流れと最終処分

 図中,処分と書かれている部分は最終処分とも呼ばれ,しばらくは人間が管理する場合もありますが,廃棄物が最終的には人間の管理から離れて自然環境中に放出されることをいいます。また,環境汚染の防止や最終処分量を減らすことなどを目標として最終処分に先立って行われるのが処理(中間処理とも呼ばれる)ということになります。

2. 最終処分の方法

 最終処分の方法には「埋立」と「海洋投棄」とがあります。しかし,海洋投棄は国際的に原則的に禁止されています。

 最終処分場は法律上,3つの型に分けられています(図2)。ひとつはそのまま環境中に放出しても環境汚染の危険性がないと考えられる廃棄物だけを受け入れるための「安定型処分場」です。この処分場には環境汚染を引き起こすような汚水(浸出水)を発生させる心配のないものしか入れないので浸出水対策は施されていませんが,埋め立てた廃棄物が崩落するのを防ぐ目的で堰堤や擁壁が設置されています。

 逆に,有害性が特に高い廃棄物は「遮断型処分場」に入れなければなりません。この処分場は埋め立てた物を外部環境と完全に隔離するためのしっかりした構造物で作られます。また,雨水などが浸入して汚水を発生させないような工夫もなされています。

 遮断型に入れなければならないほど有害ではないけれど埋め立てた後分解して汚水を発生させる可能性があるものは「管理型処分場」に入れます。われわれの日常生活から出るごみ(一般廃棄物といいます)をそのままあるいは焼却処理するなどしたものもこの型の処分場に埋め立てることになっています。管理型処分場では,安全性を確保するために様々な工夫がなされています(図3)。基本的には,(1)廃棄物を受け入れる段階で安全性を確保するための受入チェックシステム,(2)場内で発生する浸出水が外部に漏れるのを防ぐ遮水システム,(3)浸出水を速やかに場外へ排出する集排水システム,(4)浸出水を適正に処理する浸出水処理システムなどが総合的に機能することで環境汚染の防止を図っていますが,万一の事故に備え,漏水検知システムを組み込んで遮水システムが正しく機能しているかを確認したり,定期的に周辺の環境調査を行って処分場に起因する環境汚染が起こっていないかを監視したりすることになっています。

埋め立て処分の形式
(図2)埋め立て処分の形式
管理型処分場の機能
(図3)管理型処分場の機能

3.安全性について

 最終処分に関して様々な視点から安全対策が施されていることはご理解いただけましたか?しかし本当に最終処分場は安全なのでしょうか?この問いに対して答えるのはかなり難しそうです。なぜなら世の中に「絶対安全」ということはないのでその意味ではノーと答えるしかないのですが,「実質的な安全」という意味ではイエスと答えることもできるからです。

 「安全」あるいは「危険」という概念は(図4)に示したとおり相対的なもので,我々はこの直線上のどの辺にあれば実質的に安全と考えられるかということにもとづいて「安全」かどうかを判断しているに過ぎないのです。また,その判断を下す点もひとつというわけではありません。例えば「水の安全性」を問題とした場合,飲み水の安全性と,工場などからの排水の安全性を判断する基準は違います。

 一般にどこに判断基準を置くかは,危険性(リスク)と利便性(ベネフィット)の大小比較に基づいて行われることが多いようです。例えば,私たちは便利なので自動車を使いますが,そのときには交通事故に逢う危険性が生まれます。それでも自動車に乗るのは便利さ(ベネフィット)の方が事故の危険性(リスク)に比べて大きいと考えているからです。

 最終処分場も「絶対安全」とはいえないので作れば環境汚染などのリスクを生じますが,反面これがあることによって人間活動が支えられているというベネフィットがあり,ベネフィットの方が大きいと考えられてきたために多くの最終処分場が存在しているのです。しかし,処分場の場合,ベネフィットは社会全体が享受できるのにリスクは周辺住民に押しつける形になっています。処分場周辺の住民とそれ以外の人々の間で「安全」という感覚にずれが生じるのは当然のことです。

安全性の概念
(図4)安全性の概念

4.最終処分場への依存度

 日本では年間,約5,000万tの一般廃棄物と約40,000万t産業廃棄物が排出されています。一般廃棄物のうち約74%は焼却処理で減量されるため最終処分されるのは発生量の30%程度と考えられます。一方,産業廃棄物は,減量処理や再生利用の促進などもあり,最終処分量は発生量の約20%です。

 廃棄物のかなりの部分は何らかの形で減量され,最終処分場への負荷の低減が図られてはいます。しかし,最終処分場用地の確保は年々困難になってきています。特に山梨県の状況は深刻で,朝日新聞の調査によれば,平成9(1997)年度に県内で発生した一般廃棄物の5割以上が最終的には県外で処分されています。もし現在受入れてくれている他県が受入を拒否するようなことになったら,と考えると気が重くなります。

 今後,最終処分への依存度を減らすことが必然的に求められます。しかし,残念ながら現時点で最終処分に全く依存しないで済むというような方法はありません。やはり,当面はなんとか処分場を確保して,周辺環境への影響に十分配慮することはもちろん,様々な減量化対策を施して最終処分量を少なくして処分場をなるべく長く使うようにしていかなければならないでしょう。また,これと平行して最終処分に依存しない本当の循環型社会をめざして,社会システムの改善や技術開発を進める必要があります。

5.最終処分場に関する問題

 当面は最終処分に依存しなければならないとすると,最終処分場を今後も確保していかなければなりません。しかし,様々な理由からそう簡単に最終処分場が作れる状況ではなくなってきています。その主な理由としては次のようなものを挙げることができます。

1.「社会全体として最終処分場の必要性はわかるが自分の近くは困る」という感情
2.「なぜここに作らなければならないのか」という理由が不明確
3.「最終処分場を作る前に,もっと減量化の努力をすべきではないか」という意見
4.安全性・危険性に関する疑問
・安全性・危険性がどの程度なのかがよくわからない
・きちんとやれば安全だとしても,本当にきちんとできるのか?
・最初は安全でも,ずっと安全なのか?
・今,安全だと思っているだけで,本当は危険だったりすることはないのか?
5.最終処分場に対する規制が強化され,安易に作れなくなった

 これらに対し,残念ながら完全に納得してもらえるだけの情報を提供できない部分もあります。必要な情報を正確に得て,それをきちんと伝えるようにしていくことが求められています。

6.最終処分場を長持ちさせるために

 私たちは日常,自治体が定めたとおりにごみを分別し,定められた日に集積所に出せば済むという生活をしています。ごみが出せなくて困ったという人はほとんどいないでしょう。これは清掃事業に携わっている人のおかげであり,最終処分場があったからではないでしょうか?しかし,昨年,政府が2010年には最終処分量を現在の半分にするという目標を立てたことに象徴されるとおり,最終処分への依存度を減らすことが急務となっています。そのためにはみんなでごみ問題を真剣に考え,取り組む必要があります。

 生活者の立場としては,まず次のことに気をつけたいものです。

・ごみをなるべく出さない生活を心がける
(不要なものは買わない,ごみになりにくいものを買うなど)
・リサイクルに協力する
(分別に協力,リサイクル品を買う,リサイクルに必要な費用を負担するなど)

 また,製品を作ったり売ったりする人たちには以下のことをお願いしたいと思いま す。

・仕事の過程から出るごみを減らす工夫
(製造過程の見直し,産業廃棄物のリサイクル,ゼロ・エミッションへの挑戦など)
・製品等がごみになったときのことを考えた物づくり,販売方法の工夫
(長持ちする製品,修理・リサイクルしやすい製品,不要品の引き取りなど)

(「ごみをいただきます」−平成13(2001)年7月発行−より抜粋)

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