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ごみをいただきます

循環型都市へ向けて

山梨大学工学部教授 北村眞一

この記事は、2000(平成12)年1月28日に開催された「答えのないシンポジウム」−会場・甲府市総合市民会館 主催・無尽会−での山梨大学工学部教授 北村眞一さんの講演記録です。

1.都市の成立と基盤

 人類の狩猟、採取生活から遊牧、畜産、農耕といった原始文明への移行は、氷河期の終わりつつあったおよそ15000年前の中期石器時代といわれている。ヨルダン川近くのイエリコ遺跡から、11000年前の牧畜と栽培の証拠が発見された(ジョン・グリビン1990)

 人類の定住が始まる頃を新石器時代と呼んでいる。原始的な都市は旧石器文化の狩猟王と新石器文化の集落の合体したものだったようだ。武力と宗教的な力とで統治した。そして最も古い都市らしい遺跡は前2650年頃のエジプトのサッカーラのピラミッドと死後の街が、また紀元前2500年頃メソポタミア文明のウルには、ジグラットと呼ばれる人工丘の聖域が造られた。およそ前3000年前後数百年間に、バビロンなど多くの原始都市が結晶した。

 発達した近代都市は、大都市と中小都市、そして農村部へと次第に階層的な発達を遂げる。小都市が大都市を支え、農村が都市を最終的に支えるシステムがグローバル化し、世界の農地が世界の都市を支えるシステムへと成長した。

2.理想都市像

 近代の理想都市は、産業革命のスラムの解消、生活環境保護を唱えた。ハワードの田園都市思想に見られるように、伝染病などのない衛生的な保健性を備え、交通や商業などの都市的利便性を備え、天災から身を守る安全性を備え、自然豊かな環境の快適性(アメニティ)を備えた空間となった。そして石炭・石油資源の開発により、資源・エネルギーを大量に使うことによって、経済発展のアメニティ都市が実現しつつあった。

 しかし、20世紀末には、資源の枯渇と公害、地球環境問題の出現によって、21世紀の人類の生存が脅かされる事態が予測されるに至った。そこで提案されたのが持続可能という理念であり、そのモデルであるエコシティ、環境調和型都市、環境共生都市、循環型都市などと呼ばれる、環境理念先行型の都市像である。

3.循環型都市

 循環型都市とは、人類が将来にわたって持続的に生存・生活できるために、地球環境への負荷が少ない、持続的な物質循環ネットワークが存在する、住民がやすらげ豊かな生活をおくることができる都市であるということができる。

 都市は一次産業を基盤とする農村との共生関係にある。都市のみで理想的なエコシステムの循環を閉じることはできないが、循環型都市は少なくとも理念で掲げた3つの条件を備えることが必要である。具体的には以下のような条件整備が必要となる。

  1. 将来へ生存可能な安全性が確保される、例えば本当に安全な食糧、災害対策など
  2. 環境負荷を小さくする、例えば自動車交通量の削減など
  3. 周辺地域との持続的な循環ネットワークを持つ、例えば無農薬化を前提にした食糧と生ゴミの循環など
  4. 新しい豊かさの生活理念を再構築する、例えば歩行環境を改善し、歩行を豊かさと結合するなど
  5. 良き社会への社会変革の可能な社会制度を持つ、例えば自立する市民を育て、政治・行政への市民参加を促進するなど

 こうした内容を実現することは、従来の大量生産大量消費を前提とする従来型経済・アメニティ都市の延長ではなく、質的に異なる目標を持った新しい様式の都市構造の体系がなければならない。

 たとえば環境負荷を小さくするために、資源を節約する時、同時に別の資源を浪費したりエネルギーが増大しては意味がない。ある目的を達成するためには、何をとって何を捨てるか、トレードオフ関係を見極めて、総合的に何を我慢するかを判断しなければならない。

 そのために何を操作するか。ある種の性能要求を満たす製品は、何を材料にどのような工程で、どんなエネルギーを使って造られ、どう流通し、どう捨てられるのか、その全過程は環境へどんな影響をもたらすのかを知る必要がある。廃棄物をどう処理するかではなく、製品を作る時から廃棄を計算に入れておかなければならない。

 選択の判断、生活像の目標設定において必要なのが生活の豊かさ観であろう。我々のめざすべき豊かさの価値観を再構築しなければならない。

 そしてこれらの技術体系を社会変革において実現するには、それを受け入れられる社会的意志決定過程が必要になる。社会構造の操作は危険性をはらむ技術であり、実施に当たって厳密な倫理規定と民主的決定システムが要請される。

4.都市の土地循環

 野生生物の生息空間の減少による生物多様性の低下、絶滅危惧種の保護問題である。人間はエコシステムの中でかつては野生生物と共存し、広い意味で共生関係にあった。しかし、脳の発達から野生動物の域を越え、新しい一歩を踏み出しつつある。生物多様性を取り戻すために、野生生物の生息空間を保護し、不足する分はビオトープなどで復元する。またダイオキシンなど農薬や薬剤は、生物濃縮など循環して人間へ巡ってくる。危険な薬剤の使用は根本的に再考する必要がある。

 現在日本においては海岸線の埋立で多くの干潟が失われた。今後は干潟の保存・復元は急務であろう。また多くの湿地も失われてきたので、これも保全や復元が急務となっている。こうした個々の生息場所の保全のみでは限られた生物しか生息できない。生物多様性保全のためには、多様な生物の生息空間すなわちビオトープのネットワークを保全あるいは復元することが必要となる。

Abel Wolman
アメリカの100万人都市の1日の資源消費
出典・アン・W・スパーン(1995)「アーバンエコシステム自然と共生する都市(訳:高山啓子他)」公害対策技術同友会
Abel Wolman(1965), The Metabolism of Cities, Scientific American

5.製品の循環と廃棄物

 都市生活に必要な食糧、衣料、住居などの生産、流通、廃棄のシステムを循環型に再構成する。環境に対して悪い影響を及ぼす物質は循環の輪から外す。

6.環境都市理念と市民パートナーシップ

環境学習の発展、都市政策への市民参加、自立・自律する市民を育てるシステムが必要である。住民投票条例など参加の機会の促進、日野まちづくりマスタープラン桂川・相模川アジェンダ21など市民が参加、提案する計画事例がある。

ビオトープ
ビオトープネットワークの保全と復元計画
出典・緑の基本計画ハンドブック

(「ごみをいただきます」−平成13(2001)年7月発行−より抜粋)

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