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100年で考える都市計画

これからの都市の姿

水素の時代がやって来る

すでにこの地球上では爆発的な人口増加とそこで消費される化石燃料等で、「地球温暖化」を始めとする数々の問題が浮上してきている。 単に諸外国の事例ということではなく、我が愛すべきこの日本においても決して例外ではない。 そもそも天然資源に非常に限りがあり特にその殆どを輸入に頼っている日本の現状をいち早く愁う必要があるのではないか。

これからの人々の日常的な暮らしについても当然の事ながら、その生活する社会環境についてもこの様なエネルギー事情を充分考慮しつつ整えてゆかねばならないと考える。

簡単に言い切ってしまうと「無限というものはすでにありえない」ということになるのだろうか。それでは一体これからの生活の中でどのような変化が起こってくるのだろうか、時系列的な問題は多少前後するのだがおよその部分について検証してみたい。

1‐エネルギー源としての廃棄物の利用

いきなり本題に入ることにしよう。現在は廃棄物として処分されているが、近未来においては重要なエネルギー源として活用される事となるであろう「廃棄物」について見直してみたい。

1−1 再利用できないもの

現在はその殆どを「焼却」という一番安価な、しかも安全(衛生面で)であると言われている方法で処理されている物のうち、少なくとも95パーセントは再利用される事になると予測している。

それでは現在収集されているいわゆる「ごみ」のうち再利用出来ない5パーセントとは一体どのような物であるのかだが、「瓦礫」と言う言葉で表現されているものがそれに当たる。もう少し細かく表現すると「瀬戸物のかけら」あるいは大型ごみの破砕工程で発生する「破砕残渣」と言われているものがこれに当たる、つまり生活の中から出てくる「ほこり」などが集まったものと言う理解でよいのである。

これを日本と言う国に置き換えて数字で見ると、この瓦礫として処分されているものは2百50万トンと言う事になるのである。いわゆる生活系一般廃棄物は5千万トンと言われているので、処分出来ないとされているこの廃棄物はほんのわずかな量になってしまうのである。

1―2 再利用できるもの

それでは再生できる、あるいはエネルギーとして利用できるものはどのような物があるのだろうか。

1−2−1 厨芥類(生ごみ)

先ず第一に「厨芥類(生ごみ)」であるが、これは微生物の力を借りて再利用できる有用な資源である。その利用方法にはコンポスト(堆肥)として、あるいはバイオガスを発生させる事による活用手法など、しっかりと分別した状態では実に有効な資源となるのである。

1−2−2 容器類

あたりまえの事だが、平成9年4月からは「容器包装リサイクル法」が施行されており、缶・ビン・ペットボトルに代表される容器類などはリサイクルすることが重要である。同時に製造メーカーによる国内流通の段階で、これらの回収に対するコストを賦課対象としてゆく等の法的整備は必要条件となってくるのだろう。

この様に考えてゆくと、これからの都市では従来型の「ごみ収集」と言う作業はなくなってしまうのかもしれない。

後ほど詳しく述べるが下水道の普及及びその構造的な問題解消(現在の下水道はそれが雨水分流式・合流式に係わらず、管渠の仕組みや最終処理場の浄化構造がこの事態に対応していないと言う意味)が終了したあかつきには各家庭の流し台は「キッチンディスポーザー」が備え付けられ、生ごみはここで破砕されて下水に流す事が出来るようになるかもしれない。

1−2−3 紙類

またごみの中で多くを占めている「紙類」については、今後はミックスペーパーと言う分別の方法がとられる事で、再生紙としてのリサイクル循環が行われる事となるであろう。もしくはその他プラスチックとここで回収するミックスペーパーによる「RPF」(リサイクル・ペーパー・プラスチック・フュエル、紙とプラスチックだけを原料とした固形燃料)として、利用される事も考えられる。

これらの事から考察すると従来型のごみ収集という形ではなく、資源回収型の回収となる可能性を秘めている。それだけではなく、場合によっては無価回収ではなく「有価回収」つまり、回収したものに対して価値を見出し、対価を支払う事さえ十分に考えられるのである。 この様な生活環境の変化の末、これからやってくる都市には道端などにほんの少しのスペースを使い「ごみ箱」が置かれているのかもしれない。そこには掃きだした「チリ・灰・芥」だけを入れるためにである、これらは人間が繊維製品を使いつづける限り発生してしまうのだからしょうがないものなのだろう。

1−2−4 下水汚泥

廃棄物の利用として、水循環における廃棄物と言われている下水汚泥については意外となじみが無いかもしれない。

そもそも人間は摂取した食物エネルギーの内、60パーセントしか利用できずに排泄してしまうと言われている。そう考えてみると昔は「下肥」と言われているように、人糞を肥溜めと言う一定の醗酵槽に貯蔵して充分醗酵させ、それを肥料として畑にまいていたのではないか。もちろん現代でこれを行えと言っても無理がある、しかしこの様な微生物を応用した技術を一歩も二歩も先端的に進めてゆくと、そこには植物や動物たちによって作り出された物を徹底的に利用させていただく事で新しい産業の姿が見えて来はしないか。

この下水道に含まれている有機成分を先ほど出て来た厨芥類といっしょに醗酵させる、そしてそこで発生するバイオガスを精製して燃料として利用する、この様な事も現実に行なわれるようになって来るのではないか。

2‐天然資源の利用 エネルギー源としての「樹木」

山梨県は甲府盆地を中心として周囲を山に囲まれている、その山々は実に深くしかも充分すぎるほどの木々で覆われている。そこでこの「樹木」を利用したエネルギー自給の道は無いのだろうか、すでに実施もしくは研究されている事例を含めて考察してみたい。

そもそも古来より燃料として、もしくは暖を取るには「薪や炭」が日常的に使われてきた事は言うまでもない。しかしそれらが近代になると石炭に取って代わられ、やがては石油となってしまっているのである。つまり燃料として持つ単位あたりのカロリー数が違うと言う事と、その取り扱いの簡便さによって、時代と共に変化してしまったと言う事である。

ここでは従来のような薪としてその樹木を使うのではなく、より単位あたりのカロリー数を付加価値として付け加える事が出来るか。もしくは放置されたり単純に処分されてきた例えば間伐材などを、いかにして付加価値をつけ利用できるかと言う方向に目を向けて行きたい。

いくつかの事例として「廃材のペレット化」による燃料として、「微粉炭によるガス化燃料」として、「木質バイオマス」として燃料の生産等の事業がすでに考えられている。

また間伐材などはそのまま集成材として再利用されている場合もあるし、セルロース部分を除去し、リグニンの抽出によってリサイクル木質材として活用されてもいる。

しかし基本は一定の場所でいかに多くの素材を集める事が出来るかという点で、数々の問題が発生しているのが現状である。つまり石炭、石油に比べ輸送に対する抵抗力が非常に大きいと言う事である、この事がどうしても木質の再利用に対するデメリットになってしまい、企業化出来にくいということなのだ。

今後訪れる技術革新の中で新産業として成立するのかは、いかにしてエネルギーを凝縮して運送できる形態にするかがこの資源を生かす最大の問題となりそうだ。しかしこの様な形で副産物に付加価値がついてくると、現状の「林業」という形態もかなり変化してくるのではないかと思われる。

3‐都市の構造

甲府盆地で言うと「電力」は東京電力、「都市ガス」は東京ガス、と言った具合にはっきりと大別化できるのが現在の様子である。

しかし今後は家庭に小型「燃料電池」発電装置が導入されてくる事が予想されると、その地図はかなり大幅に塗り替える必要性が出て来る事となるだろう。

この燃料電池についてはすでに数多くの文献等がある、後段一定の説明はするがその科学的な事柄については専門家に任せたい。

簡単に言うと発電装置にエネルギーとしての水素を送り込み、大気中の酸素と化学反応させることで電気を発生させ、且つ温水を得る事が出来るという装置である。ここでは燃焼と言う工程をを行わないため、炭酸ガスの発生を従来以上に抑える事が出来るのが大きな特徴である。

同時にエネルギー変換のロスが従来以上に少なく、例えば高圧送電の際に生ずるロスなどがないことから、産業界を含めて大きな期待される技術の一つに上げられている物である。

ここで小型化された燃料電池が家庭に入り込む事で、ガス(都市ガス、プロパンガス)事業者は非常に大きな期待を抱いているのである。しかしだからと言って電力会社が無くなってしまうと言う訳ではない。あくまでこの燃料電池は補助的なものであり、すべての電力を供給出来てしまうようなスーパー技術ではないのだ。とは言うもののこの技術革新のなせる技は従来の生活の中での概念を一変させてしまう事は事実のようだ。

一般家庭においては電気と温水を同時に供給する小型の燃料電池の普及と、太陽光によるソーラー発電を組み合わせた「エネルギー自給家庭」が普及する事は充分想像できるのである。この様な家庭が普及する事でいわゆる街中の変圧器が激減し、景観上も町並みがあっさりとしてくることになろう。

また電車にこの燃料電池を掲載する事で、架線のない線路が登場すれば、これもまた景観上大変な変化を伴う事となる。あるいは街中で走る自動車が「燃料電池自動車」が主流になれば、走る車両からはロードノイズだけが聞こえてくるようになるだろうし、排気ガスが出ないということで町のにおいも変ってくるに違いない。これによって「暴走族の騒音」の心配もなくなってくるのだろうか。

4‐燃料電池とは

そもそもこの燃料電池は排気がクリーンで、発生する水を飲み水として利用できることから、有人宇宙船の電源として着目された。

1965 年米国ゼネラルエレクトリック(GE)社製出力1kwの水素・酸素を燃料とする高分子形燃料電池が米国NASAの有人宇宙船のジェミニ5号に搭載され、実用化第一号となったところから歴史は始まっている。

その後小型高集積型のセル(水素・酸素を取り込んで電気を発生させる装置)の開発から、常温に近い温度での稼働に至り、現在のかなり実用化に近い形状まで進んできているものである。

現在の主な研究用途としては自動車、携帯電話、パソコン等の民生用途及び、軍事用(特に潜水艦)等の用途に向けて開発にしのぎを削っているようである。

空気中の酸素と水素を反応させて電気を得るわけだが、その水素を得る為の使用燃料はガス(天然ガス・プロパンガスを含む)、石油、メタンハイドレート(低温、高圧下の条件で、水分子の結晶構造の中にメタン分子が取り込まれた氷上の物質を言う。日本近海でもかなりの量が見込まれ、今後のエネルギー自給に大いに役立つと言われている)、バイオガス等などが上げられている。

つまり上記1章‐2章で産業構造が変化するかもしれないと言ってきた数々の考えられる事例は、バイオガスを発生させ、そのままガス自動車の燃料として改質する手段と、水素を得て燃料電池を起動させるという二種類が考えられてくるということになるわけである。

このことを十分理解していただければ、2章で述べた山梨県における新産業の可能性については、仮に海岸部の都市であれば使用されていない海産物という形に置き換えて考える事で新産業の可能性がでてくる事は言うまでもない。

例えばであるが、浜辺や岩場に打ち上げられた海草の類を使って有機物分解をする事で、バイオガスが得られることとなるのである。あるいは山がなく平地であり畜産が盛んな場所については、その畜糞を使用することでバイオガスが得られることとなるのである。但しここで得られるバイオガスは万能ではない、ソーラーシステムなどとの併用や、従来からある各種エネルギーとの併用が出来てこそ初めて快適な生活が保たれると考えているのだ。

この燃料電池を利用した数々の産業製品の内自動車に的を絞ってみてみると、経済産業省が実施する「水素・燃料電池実証プロジェクト」略称JHFCという団体がある。
そこでは2010年には5万台、そして2020年には500万台の燃料電池自動車を走らせようという具体的な数値を上げての計画が発表されている。当然この計画を推進するには「街中に水素供給スタンド」が、現状のガソリンスタンドのようになくてはならないし、あるいは家庭で自分の自動車に水素を供給できるようなシステムを家庭用燃料電池の隣に作る事が要求されてくる事となる。

この様な一般家庭の変化は都市全体に対しても大きな変化をもたらしてくるに違いない、例えば「エネルギースタンド、あるいはエネルギーステーション」といった名称で、地域のエネルギーを供給するような一定規模の集団的供給システムの中で新たなコミュニティーを住民が作り上げてゆくといった新しい自治集団が形成されてくるのかもしれない。

一方アメリカにおいては2003年年頭教書でブッシュ大統領は「今年生れてくる子供たちが最初に乗る自動車はその燃料が水素で走っている」と言っていた。
またカリフォルニア州知事アーノルド・シュワルツェネッガーは声明の中で次のように述べた。

「カリフォルニアの人々は未来を作り出してきたが、われわれは今、再び未来の創造に着手しようとしている。われわれには、環境と経済の発展は共存しうることを世界に示す、またとない機会が与えられている。今回提案する未来の姿は、カリフォルニアにとっては現実的であり、達成可能なものだ。しかし時間はかかる。したがって、われわれは今、その種をまかなければならない」
そして州全体に水素燃料スタンドを150か所から200か所配備するとしている。

この様に世界中が現在この燃料電池自動車の開発にしのぎを削っているのが現実の姿である、そうした中で先程から再三にわたって述べている「バイオマスエネルギー」としての水素の抽出およびバイオガスの複合利用については、程遠い世界と言うよりも実に近未来の都市におけるエネルギー構造の姿なのかもしれない。

これらを考えるにつけ、我々が現在暮らしている都市の姿とこれからの都市の姿というものの相違点については、100年後にはどのようになっているのだろうか。

5‐地球温暖化に対応する

メタンガス(CH4)は温室効果ガスの1つであり、湿地や水田、牛等の反すう動物から発生する。
二酸化炭素の約20倍以上の温室効果をもつ事も証明されているが、自然界の中で通常的に発生してしまう厄介なものとして扱われてきた。

場所によってはごみの埋立地において地中のごみが醗酵する事でメタンガスが発生し、地面に筒を入れて燃焼させ処分した等と言う笑えない話もあるガスである。甲府市においても以前の埋立地へ学校を建設した際、校庭からこのガスが噴出し、同様の方法で処分したと言う事もあった。

しかしこのガスは実は天然ガスと同様CH4であらわされ、このガスを改質機を通して炭素を取り除く事で水素の製造が容易に出来ることとなるのである。
(現在の技術では二酸化炭素CO2として排出している、それでも通常の燃焼より総体排出炭素量は少ないと言う。しかしこれからの技術革新の中では、炭素部分Cだけを取り出して純粋炭素として利用すると言った方向でも研究が進んでいると聞いている)

天然ガスはまだしも、バイオガスを発生する有機性廃棄物については、自然界に放置する事でこのメタンガスを自然と放出していってしまう事となるのである。つまりバイオガス化事業は大きな意味では地球の温暖化に貢献する事業なのである、しかもここで生産された燃料としてのガスについては、当然人間が活動するに必要なエネルギーを供給してくれるものであるから、ここでも地球温暖化に貢献する事となっているのである。

1章、2章で取り上げた残渣あるいは下水汚泥も、そのままの形で放置してしまうとやはりこのメタンガスを排出する事になってしまう。

それではこれからやってくる水素社会についてはすべてが良い事ずくめなのか、と言ってしまうとどうやらそうでもないらしい。

アメリカのある科学者は水素の過剰使用について、これが漏れて大気中に拡散する事で、オゾン層の6パーセントが破壊されてしまうと警告しているそうである。大気圏の一番外側ではオゾンO3は紫外線の影響で水素と結合しやすくなり、水H2Oとなって水蒸気として落下してくると言う説である。

これも含めて今後の研究に期待したいところであるが、これ以上の技術的な話についてはここでは割愛しさせていただく。

6‐終わりに

以上の説明などで若干でもこれからの変ってゆく都市の姿について理解していただけるとありがたい。

想像できる未来都市の姿は
a.従来型の「ごみ収集」と言う作業は無くなり資源回収型となった都市
b.生ごみだけがキッチンディスポーザーで下水に排出されている家庭
c.燃料電池などによるエネルギー自給の進んだ都市
d.エネルギーの集団的供給システムによる地域コミュニティ
e.水素燃料スタンドが完備して静かな交通機関が走る都市

今まで説明したように微生物のおかげで現在の生活は快適になってきていると言い切っても良いのではないか、そしてその源はどうやら水にあるようだ。現在の科学はすでに太陽光を使って水から直接水素を発生させる技術も確立しつつあると言う、電気分解などということをせずにである。

製鉄現場や苛性ソーダ工場では副生水素が発生し、従来は放置されてきたと言う。しかし2005年日本国際博覧会の長久手会場−瀬戸会場間を走行する燃料電池バスへの燃料供給を目的とした水素ステーションを瀬戸会場バスターミナルの敷地内に建設し、都市ガスからの水素と製鉄副生水素からの精製水素供給源とする水素ステーションを隣接して設置し、2種類の水素供給源を組み合わせ稼動させる計画が示すように、これらの計画はもう間近に迫ってきているのだ。

これからやって来る水素社会の最終的な姿は残念ながら想像の域を脱しきれないものである。だがこの様に「人に、環境に優しい社会」に向けて社会が変ろうとしている今こそ、我々自身の心も「利便性の追及」を棄て、ゆとりを持った「歩いて楽しく暮らせる街づくり」に向けて進んでゆく必要があるのではないか。

水素社会の道路上では自動車のクラクションは危険を知らしめる「警笛」ではなく、「ここにいるよ」という優しさを込めた音色がふさわしい。

平成16年12月29日 筆

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