今朝は甲府地区広域事務組合の会議にあたり、それに出席すべく資料を検討していたところ、とっても不思議な規約にぶつかってしまった。この事を調べてゆくと甲府地区広域事務組合発足の時点まで遡ってしまうのであるが、規約に書いてある事なので致し方ない。
組合規約第4章第17条(負担金)には、地方交付税法の規定に基づく消防費に係る基準財政需要額の算定において「消防本部及び消防署を置かねばならない市町村を定める政令」に基づく指定市町村として算定される基準財政需要額の73パーセントに相当する額とする。と書いてあり、続けて、ただし、甲府市に付いては当該基準財政需要額の86パーセントに相当する額とする。と締めくくっているのである。
これについては下の表を参考にして頂きたいのだが、確かに昭和48(1973)年この組合発足当時は甲府市が占める割合は負担金ベースで78.6パーセントであった、しかし31年後の平成15(2003)年における甲府市が占める負担金割合は64.5パーセントにまで落ち込んできているのだ。
しかし負担金割合の落ち込みを「なんだ甲府市の負担が軽くなったのか」と考えることは間違いだと気付いていただきたい。上記のように甲府市と5町の組合規約による負担率には差がありながらそれぞれ一定の水準で推移しているが、平成15年で見ると30億円の消防費による市民サービスは79.9%という平均負担率(負担金/基準財政需要額)により維持されている、その平均負担率を押し上げているのは甲府市の負担率(いわば甲府市の身銭を削った拠出)だとゆうことなのだ。その状況は過年度においても顕著だと言えよう。広域事務組合を構成したことで実施できている市民サービスは関係する行政が等しくその維持に貢献せねばならないのは言うまでもないが、これは上記の規約に則っているとゆう事である。
基準財政需要額の算出方法と人口の関係が、下表では「甲府市対比5町」の値が半減している事に見事に現れている事にも気が付くはずである。更にまた、「甲府地区広域事務組合人口推移表」における「甲府市対比5町」の値と比較することで、基準財政需要額算出にある問題も伺い知ることができるとは言えないだろうか。
昭和48年 | 昭和50年 | 昭和55年 | 昭和60年 | 平成2年 | 平成7年 | 平成12年 | 平成15年 | |
甲府市 | 344,840 | 556,330 | 1,046,491 | 1,380,791 | 1,743,824 | 2,218,861 | 2,357,896 | 2,309,121 |
259,973 | 465,878 | 740,509 | 1,035,190 | 1,367,158 | 1,823,904 | 1,914,612 | 1,946,589 | |
竜王町 | 34,487 | 63,647 | 154,733 | 244,325 | 339,986 | 446,107 | 492,243 | 518,578 |
21,657 | 45,025 | 92,294 | 163,937 | 237,650 | 323,428 | 356,876 | 378,562 | |
敷島町 | 29,001 | 48,157 | 95,745 | 134,762 | 185,323 | 248,712 | 268,307 | 275,530 |
18,211 | 34,066 | 57,087 | 84,956 | 129,541 | 180,316 | 194,423 | 201,137 | |
玉穂町 | 11,163 | 18,892 | 42,074 | 72,811 | 108,267 | 148,903 | 165,954 | 175,981 |
7,010 | 13,364 | 25,063 | 45,887 | 75,679 | 107,955 | 120,317 | 128,466 | |
昭和町 | 19,259 | 32,602 | 69,666 | 102,242 | 147,193 | 205,541 | 230,285 | 244,062 |
12,094 | 23,063 | 41,572 | 64,514 | 102,888 | 149,017 | 166,957 | 178,165 | |
田富町 | 18,805 | 31,837 | 72,082 | 108,481 | 159,104 | 223,680 | 243,069 | 252,749 |
11,809 | 22,522 | 42,964 | 68,371 | 111,214 | 162,168 | 176,225 | 184,507 | |
5町 | 112,715 | 195,135 | 434,300 | 662,621 | 939,873 | 1,272,943 | 1,399,858 | 1,466,900 |
70,781 | 138,040 | 258,980 | 427,665 | 656,972 | 922,884 | 1,014,798 | 1,070,837 | |
甲府市対比5町 | 3.06 | 2.85 | 2.41 | 2.08 | 1.86 | 1.74 | 1.68 | 1.57 |
3.67 | 3.37 | 2.86 | 2.42 | 2.08 | 1.98 | 1.89 | 1.82 | |
組合合計 | 457,555 | 751,465 | 1,480,791 | 2,043,412 | 2,683,697 | 3,491,804 | 3,757,754 | 3,776,021 |
330,754 | 603,918 | 999,489 | 1,462,855 | 2,024,130 | 2,746,788 | 2,929,410 | 3,017,426 | |
甲府市の割合 | 78.6 | 77.1 | 74.1 | 70.8 | 67.5 | 66.4 | 65.4 | 64.5 |
甲府市負担率 | 75.4 | 83.7 | 70.8 | 75 | 78.4 | 82.2 | 81.2 | 84.3 |
5町負担率 | 62.8 | 70.7 | 59.6 | 64.5 | 69.9 | 72.5 | 72.5 | 73 |
組合平均負担率 | 72.3 | 80.4 | 67.5 | 71.6 | 75.4 | 78.7 | 78 | 79.9 |
「甲府市の割合」とは、消防費負担額の組合合計に占める甲府市負担額の%
「負担率」とは各市町での「負担額/基準財政需要額」の%表示。「甲府市対比5町」とは「甲府市/5町」と算出した倍率。
昭和35年 | 昭和40年 | 昭和45年 | 昭和50年 | 昭和55年 | 昭和60年 | 平成2年 | 平成7年 | 平成12年 | 平成15年 | |
甲府市 | 160,963 | 172,457 | 182,669 | 193,879 | 199,262 | 202,405 | 200,626 | 201,124 | 196,154 | 194,892 |
竜王町 | 8,242 | 8,460 | 11,276 | 17,493 | 25,002 | 31,515 | 34,753 | 37,693 | 40,559 | 40,564 |
敷島町 | 9,475 | 10,022 | 10,301 | 11,603 | 13,623 | 15,142 | 16,504 | 17,713 | 18,546 | 19,106 |
玉穂町 | 3,054 | 2,858 | 2,779 | 3,380 | 4,156 | 6,784 | 8,325 | 9,460 | 10,443 | 9,930 |
昭和町 | 5,011 | 5,102 | 5,662 | 7,000 | 8,751 | 10,700 | 12,548 | 14,590 | 15,937 | 15,906 |
田富町 | 5,312 | 4,938 | 5,321 | 6,814 | 9,228 | 11,854 | 14,150 | 15,674 | 16,694 | 16,428 |
5町 | 31,094 | 31,380 | 35,339 | 46,290 | 60,760 | 75,995 | 86,280 | 95,130 | 102,179 | 101,934 |
甲府市対比5町 | 5.18 | 5.50 | 5.17 | 4.19 | 3.28 | 2.66 | 2.33 | 2.11 | 1.92 | 1.91 |
組合人口 | 192,057 | 203,837 | 218,008 | 240,169 | 260,022 | 278,400 | 286,906 | 296,254 | 298,333 | 296,826 |
確かに甲府市周辺の町村における人口増加は眼を見張るものがある、あたかも甲府市という皿に勢いよく水を入れたため中にたまらず溢れ出してしまった様相である。その事が5町の基準財政需要額を当然ながら押し上げてゆき、自然と甲府市の負担割合が減少してゆく事となっているのである。であるならばなぜ今ここで負担割合についての見直し議論が為されないのであろうか、この議論をしないことは甲府市民の代弁者たる議員としての資格問題になってしまうと考えるのだが如何であろうか。
この組合設立の折、周辺町村は確かに人口も少なくこれといって産業は見当たらない農村地帯であった、其処に消防を作れといわれても財政的には不可能に違いなかったのであろう。その後30年という時の流れはこの広域事務組合の構造を一変させ、甲府市に対しておんぶに抱っこであった周辺町村もすでに立派に成人した様相を見せているのである。同時に周辺自治体では合併の議論がいくつか持ち上がり、益々独立した自治体という方向を出そうとしている今、もう甲府市に対して「甘え」の構造は許されないのではないか。
すべからく地方自治体においてはその自治体の責務として「住民の安心安全を守る」のは必須の事なのである。そんな中でもすでに気づいている方もあると思うのだが、この甲府広域事務組合に加盟している地方自治体の人口はすでに一定の数に達しており、日本という国がこれから向かっている少子化という減少にすでに取り込まれつつあるのだ。グラフを見て頂ければはっきりと分かるのだが、人口減少は甲府市だけではない。周辺5町にとってもまもなく深刻な事態になってきそうな感じがしている、つまりせっせと整備したインフラや施設が無意味になってしまう時期はもう其処まできているということである。
この事態に対して今こそ本当の意味の力強い自立した地方自治体を作るため、現状の全国約3,300あるといわれる自治体は共同してその当初目的である「住民のための、自治体」を作るために「市町村合併、都道府県合併」という手段を行使することが必要であると考える。そしてもしこれを為し得ないと言うのであるならば地方自治体どうし「基本的に平等公平を持って全ての共同事務作業を行うべき」と考えるのだが。
このような事から,基準財政需要額のトリックも分かると思います。つまり日本中を標準化しようとしてきた政府のやり方は、人口比率に追随せずに市町村の姿を捉えようとしてきたのです。これでは弱小自治体はつい慢心してしまうはずです。このまま地方交付税が続くとは限りません。最後のその時になっても私は知りませんよ。
甲府地区広域行政事務組合加盟の自治体については甲府市と離れた合併協議が既に進行しています。組合との関係では、それらはいったん新しい市として誕生するのですから、旧来の広域事務組合からは脱退する。しかし、同日同時に改めて加盟申し込みをするという奥の手です。
これには住民の命と暮らしを守る救急業務が絡んできます。だから新たな加盟を拒否すると一番困るのは敷島、竜王の住民。「甲府市は人命を軽視する」とでも言うのでしょうか。これはすでに合併当事町長の口から出た言葉ですから腹が立ちますが。
10万人規模の人口を有する都市を標準として、保健、衛生、廃棄物収集など等を一定の単位費用として表したもの。国勢調査の人口を参考にするなどして補正係数をかけ、一定の都市としての財政需要を予測するために表された金額である。
補正係数とは、人口10万人以上ある都市は事務効率が次第によいといわれていることから、0.9とか0.85をかけ、10万人以下の都市においてはその効率は10万人の都市を下回るとされているので1.1、あるいは1.2をかけることで算出される数字である。数式としては、人口×単位費用×補正係数=基準財政需要額となっている。ちなみに平成15年度の甲府市においては消防にかかわる基準財政需要額は2,309,121千円となっている。
地方交付税法の第11条(基準財政需要額の算定方法)、第12条(測定単位及び単位費用)、第13条(測定単位の数値の補正) を参照してください。
内閣府 平成13年度 年次経済財政報告 (経済財政政策担当大臣報告)の「コラム3-2 地方交付税制度の仕組み 」を参考にしてください。
平成15年12月24日
Copyright(C) 2003 by NONAKA Ichini
野中一二事務所
400-0016 山梨県甲府市武田2-11-19
電話 055-254-4040 FAX 055-254-4042